【映画レポート15】浅草キッド(劇団ひとり)感想


ビートたけしの小説を原作として劇団ひとりが映像化させた「浅草キッド」を視聴しました。
劇団ひとりが構想7年かけて描いた浅草キッド。
多くの配給会社に持ちかけたが断られ続け、Netflixに拾われて本作が誕生したようです。
よくぞ拾ってくれた!!
進撃の巨人がジャンプに断られてマガジンに行ったように、評価する人は評価するんですね。
さて、それでは感想戦いってみましょう。
目次
概要

原作:ビートたけし
脚本:劇団ひとり
監督:劇団ひとり
出演:大泉洋、柳楽優弥、門脇麦、他
公開:2021年12月9日
放映時間:123分
興行収入:Netflixのため不明
主演は青天の霹靂でも劇団ひとりとタッグを組んだ大泉洋と、演技力には定評のある柳楽優弥。
脇にも名俳優たちがずらっと並びさらには演技指導に松村邦洋やタップダンスHidboH。
主題歌は桑田佳祐!
すばらしい布陣ですね。
劇団ひとりのやりこみ力・とことんやるという思い・熱量が詰まりすばらしい作品になってます。

HidboH氏は世界のたけし監督の「座頭市」のタップダンスを演出しておるぞい。
あらすじ
昭和40年代の浅草。大学を中退し、「お笑いの殿堂」と呼ばれるフランス座のエレベーターボーイをしていたタケシは、深見のコントにほれ込んで弟子入りを志願。ぶっきらぼうだが独自の世界を持つ深見から、“芸ごと”の真髄を叩き込まれていく。歌手を目指す踊り子・千春や深見の妻・麻里に見守られながら成長していくタケシだったが、テレビの普及とともにフランス座の客足は減り、経営は悪化していく。やがてタケシはフランス座の元先輩キヨシに誘われ、漫才コンビ「ツービート」を結成。深見の猛反対を押し切ってフランス座を飛び出し、人気を獲得していく。
出典:映画.com
ビートたけしは昔から見ていましたし、映画監督としてすごいことは知っていましたが下積み時代のことはふわっとしか知らずにいました。
「浅草キッド」という歌をテレビ番組や紅白歌合戦で歌っているのをみて、「はぁーいい歌だな。昔は大変だったんだな。」と大したことない感想だけでした。
ポジティブな面やきれいな部分しか見せていないのかもしれませんが、本作を通じてやっとあの「浅草キッド」の歌を少し理解できたような気がします。
お笑い好きな人や何かに一生懸命取り組んでいる人はぜひとも見るべき作品になっています。

以下よりネタバレがあるから注意するんじゃぞ。
視聴者の反応
- 柳楽優弥が本当に素晴らしかった。演技でありつつたけしをしっかり表現していた。
- 大泉洋の深見も嫌味なく人間味あふれる存在として表現できておりセンス抜群。
- ストーリーがシンプルでみやすい
- 最後の浅草キッドで号泣
- ラストの1カメラの演出が最高
といった反応で、すこぶる高評価が多かったです。

劇団ひとりの演出に対するコメントも多く寄せられていました。
芸能人の反応
気になるお笑い芸人たちの反応を少しピックアップしてみます。
- ダウンタウン松本「すごい。すばらしいです。もっと長尺でつるはしのところまで観たかった。」
- 東野「さすが劇団ひとり、抜群やなって思いました。」
- ビートたけし「やっぱり自分のことだから恥ずかしいからさ、飛ばし飛ばしで。でもタップのところかな。タップのところだけは見たな。あれはよく練習しているな」
- ミルクボーイ内海「芸人が観終わったあと誇りを持てる映画ですが、芸人以外の人でも観終わったらきっと、前向きになれるは」
他にもほぼ全芸人がなんらかのかたちで浅草キッドについて語っています。
やはりお笑い芸人としては観ずにいられない。かつ、それだけビートたけしという存在が大きいということなんでしょう。
好きな演出・シーン
どのシーンも無駄なシーンがなく重要ですが、その中でもいくつか好きなシーンを挙げてみます。
①「芸人だばかやろう」
本作のテーマである「芸人だよ、バカヤロー」というセリフ。
何度も本作で使われており、すべて演出として抜群にカッコいいです。
- たけしが小さなスナックで漫才を聞かない客に向けての「芸人だよ、バカヤロー」
- 深見がフランス座で下手な演技に笑う客に向けて「芸人だよ、バカヤロー」
- 1カメラでフランス座を回顧するシーンの最後に二人で「芸人だよ、バカヤロー」
いい演出ですよね。
くどくもないし、すべて演出として効いている。
たけしがスナック廻りをしながら漫才しているシーンでまずは、一発目のジャブ。
過去のフランス座を説明する部分では、そのたけしの「バカヤロー」口調の起源である師匠深見の「バカヤロー」
最後に一緒に「芸人だよ、バカヤロー」という演出は師匠の思い・熱量がしっかりたけしにも継がれており、それを劇団ひとりとして演出したかったのではないでしょうか。
1回目に観たときは泣きながらだったのでしっかり見れていませんでしたが、2回目でなるほどなーと思わされました。
②タップシーンすべて
タップシーンの魅力はどのシーンも好きだったので、次章にて書いていきたいと思います。
③テレビ番組でどのネタでいくか考えるシーン

テレビに出演依頼があるが、ネタ的にテレビ受けしないような表現が多かったためプロデューサーより大衆受けになるように変更しろと言われます。
そのネタ番組のネタ見せ直前の舞台袖でたけしがタップを踏み始め、過去シーンを見せながらタップ速度を速めて決意した部分でタップをやめ、きよしに「元のネタでいこう」と言います。
このシーンもかっこよすぎてしびれました。このシーンだけでもタップやりたい!と思わせるほどでした。
こんなシーンは現実的に無かったのかもしれませんが、エンターテイメントとして最高の演出でした。
ベタでわかりきっているけども胸が熱くなるシーンで好きです。
何か迷ったときはこのシーンを観ながらいろいろ考えて決断したいと思います。
④師匠が席を立つ際に女性ものの靴を差し出すシーン
伏線としてさすがだなと思わせられたシーン。
わかりきっていましたが、しっかり伏線回収してくれてスカッとしたところです。
前半部分では「どんなときでも笑いをとる」ということが徹底できていませんでしたが、テレビに売れたあとでも師匠の言葉を守りどんなところからでもボケようとする。
芸を見せるときは、芸を見せるし、ボケるときはボケる。
成長してから女性ものの靴を差し出して、師匠と笑いあうシーンは最高に笑えて泣けました。
現実のたけしもどんなときでもボケようとしたり、映画監督としてスピーチする際にも一ボケ(頭を下げるときにマイクにゴツンと頭をぶつけたり)入れてきたりとさすがです。
⑤最後のフランス座をカット割り無しで魅せるシーン
おすすめシーンで触れなければいけないシーン。
ラストシーンでの、今のたけしに扮した柳楽優弥がフランス座を後ろ視点のカメラでずーっとひと繋ぎに追いかけていく見せ場。
師匠が火事で亡くなっていて、かつたけしのために頭を下げていたと知らされたあとだったので過去シーンをコメディチックに楽しく表現していくだけで笑えて泣ける描写になっていました。
ここでいくつもの与太話を実際に演じてみて伏線回収するのも見事ですし、たけしにとってたくさんの思い出が詰まった重要な場所だと同じ目線で体験できるVRアトラクションみたいになっていました。

なんか親近感あると思ったのは遊園地などでよくあるアトラクション施設みたいな感じなんですね。
⑥門脇麦が漫才を観て笑いながら泣くシーン
これまたベストシーン。
演技派の門脇麦がツービートの漫才を観ながら笑って泣いているシーンです。
これだけでなんだか泣けました。
いい顔するんですよね。
劇団ひとりのインタビューを観ていたら確か、一発でOK出したらしいです。
タップダンスなど気に入らない・思うようにならないシーンは何度でも撮りなおす劇団ひとりが一発OKはさすがです。
⑦なんといってもタップがカッコいい

タップシーンのところはすべて好きでそこだけでもYoutubeで何度も観ました。
- 師匠深見のエレベーターでのかろやかなタップ
- 誰も客がいない劇場でタップをするたけし
- テレビ番組のネタ見せ前にタップするたけし
- 最後向かい合って深見とたけしでタップするシーン
どれも最高です。
師匠深見は片手をずっとポケットに入れながら軽やかにタップダンスをしており、色気とダンディズムが半端なかったです。
大泉洋曰く、「カメラワークが足元だけだったりするので本当に大泉洋がタップしているのかわからない。なので全身を映すべき」と冗談交じりで劇団ひとりに食ってかかっていましたが、どのシーンもカメラワーク含めて抜群にかっこよかったので全身にせずによかったです。笑
そして、圧巻なのがたけし扮する柳楽優弥のステージでの数分間のタップダンス。
身体全身で表現するのはタップダンス経験者でも難しいようですが、ばっちり顔も演技し、表現もたけしらしいだろうなーという動きっぷり。
このシーンは演じた柳楽優弥も、タップの振り付けおよび指導したHideboHも、そして監督の劇団ひとりみながすばらしかったです。
そして最後に同じステップを向かい合って踏むシーン。
同じステップにもかかわらず、お互いの個性がしっかり出ていてなんとも言えないカッコよさです。
音とともにピタッと止まり、映画としてもカチッとすべてがハマったような感覚でエンディングへ向かう…

劇団ひとり監督さすがです。オリンピックの演出もしただけありますね。
冒頭のシーンはビートたけし本物か?
1回目視聴したときは驚かされた冒頭およびラストのたけしが出てくるシーン。
まるで本物。
カメラドアップにも耐えられる特殊メイクと身体の癖。歩き方。
さらには声まで似てるとなっちゃぁ、もう本物でしたね。
よくよくあとから調べてみると声は松村邦洋がアフレコしていたみたいです。
いやぁ、すごいですね!
最後に

いろいろと書きたい感想はありましたが、とりあえずでまとめてみました。
個人的邦画映画のベスト10には入ってくるくらいのお気に入り映画になりました。
Youtubeでみんなの感想や関係者のインタビューをぐるーっと廻り終えて、もう一度見直そうかなと思っています。
みなさんは映画いかがでしたでしょうか。
DVD・Blu-ray販売が待ち遠しいですね。
さて、それでは最後に本ブログ恒例のまとめ五七五です。
芸人は
笑われるより
笑わせろ
締めの五七五はまとめでも整理していますのでもしよければみていってください。
記事:これまでのまとめ五七五
ではでは。