【映画レポート12】騙し絵の牙を観た感想 みんなほんとに騙された?


2021年3月26日より公開している大泉洋を”あてがき”した騙し絵の牙という作品を観てきました。
大泉洋の主演を前提として書かれた作品がついに映画化。
予告の内容と大泉洋、松岡茉優が主演ということで、これは観るっきゃないと観てきました。
うん、面白かったです。騙し絵とタイトルがついているのと予告がハードル上げ過ぎた感はありましたが楽しめる作品です。
それでは感想をちょっと。
目次
概要
原作:騙し絵の牙
著者:塩田 武士
原作販売:角川文庫
原作発売日:2017年8月31日
監督:吉田 大八
出演:大泉洋、松岡茉優、宮沢氷魚、池田エライザ、中村倫也
公開:2021年3月26日
放映時間:113分
興行収入:不明
賞:2018年本屋大賞ランクイン
本作品は概要には書ききれなかった豪華俳優陣がすごいです。
斎藤工、佐野史郎、リリー・フランキー、國村隼、木村佳乃、佐藤浩市他。
全員が違和感なく曲者を演じている。
あらすじは以下のとおり。
「罪の声」などで知られる作家の塩田武士が大泉洋をイメージして主人公を「あてがき」した小説を、大泉の主演で映画化。出版業界を舞台に、廃刊の危機に立たされた雑誌編集長が、裏切りや陰謀が渦巻く中、起死回生のために大胆な奇策に打って出る姿を描く。「紙の月」「桐島、部活やめるってよ」の吉田大八監督がメガホンをとり、松岡茉優、佐藤浩市ら実力派キャストが共演する。出版不況の波にもまれる大手出版社「薫風社」では、創業一族の社長が急逝し、次期社長の座をめぐって権力争いが勃発。そんな中、専務の東松が進める大改革によって、売れない雑誌は次々と廃刊のピンチに陥る。カルチャー誌「トリニティ」の変わり者編集長・速水も、無理難題を押し付けられて窮地に立たされるが……。
出典:映画.com

伏線やら騙しあいやらお好きな方には楽しい作品になっています。
※以降ネタバレ含みます。ご注意ください。
あらすじ

舞台は大手出版社「薫風社」。かねてからの出版不況に加えて創業一族の社長が急逝、次期社長をめぐって権力争いが勃発する。改革派の急先鋒・東松(佐藤浩市)の指揮により、売り上げの乏しい雑誌は次々と廃刊のピンチに。カルチャー雑誌「トリニティ」も例外ではなく、新任の編集長・速水(大泉)も窮地に立たされていた。だが、一見頼りなく見えるこの男、実は笑顔の裏にとんでもない「牙」を秘めていた。嘘、裏切り、リーク、告発——。クセモノ揃いの上層部・作家・同僚たちの陰謀が渦巻く中、新人編集者・高野(松岡茉優)を巻き込んだ速水は起死回生の一手に打って出る。
出典:シネマトゥディ
売り上げピンチのトリニティを復活させるために大泉洋演じる速水がいろいろやっていくというストーリーですね。
映画の世界といえど巻き込み力・企画力・人たらし能力には大泉洋はうってつけですね。
大泉洋(速水)の企画・根回し・嘘
まずはメインどころ大泉洋(速水)のトリニティ復活のための企画をみていきましょう。
- 大御所小説家 二階堂大作の古い大ヒット作品をコミック化、連載をトリニティで(成功)
- 新人小説家八代聖の発掘(←仕込み成功)
- 人気モデル作家・城島咲の才能発掘、モデル業とともに売り出し(成功)
- 新人小説家八代聖を使った謎の男神座詠一のおびき出し(成功)
- 前社長の息子伊庭と関係を構築し世界進出を画策(←KIBA計画のSTOP成功)
- 神座詠一の連載可(←失敗)
やり手の企画屋ということでいろいろと突拍子も無い企画を仕込み・実現させていく手腕は見物です。
反発する人間もいるが、人たらし能力や数字をたたき出すことで無理やり実現させていく。
特に城島咲の銃刀法違反に伴う表紙入れ替えをするかどうかの佐藤浩市とのやりとりは圧巻。
実際にそれで成し遂げてみせるので見事なものです。
物語的に一番大きなポイント・企画はやはり神座詠一(リリー・フランキー)の存在です。
これがあったからこそ伊庭や世界のグローバル企業を落とせたという設定であると思います。
このKIBA計画を打ち崩した速水(大泉)の牙を高野(松岡)が牙を立てて裏切る。
邦画作品として、小説原作としてしっかりまとまっているなと思いましたね。

ハリウッドによくあるアクション・爆発・ラブコメが無いのも好印象でした。反対に物語に起伏が付きづらいのですが、いい意味で起伏もあり楽しいエンターテイメントでした。
登場人物全員ウソをついている?ほんと?

覚えているままに作中ででてきた嘘・裏切りを書いていきたいと思います。
後述しますが、やはり予告で身構えさせすぎないのが重要ですね。
口コミで広げるという戦略もあったかと思うのですが…
- 速水(大泉)は前章のとおり、複数嘘をついていた
- 二階堂大作がトリニティ原作コミック化へOKを出す(小説薫風への裏切り)
- 八代聖がトリニティから小説薫風へ(トリニティへの裏切り)
- 八代聖は本物ではなく偽物の俳優が演じていた(小説薫風への裏切り)
- KIBAプロジェクトの廃止(東松への裏切り)
- 神座詠一が高野につく(速水への裏切り)
ここまでしっかりどんでん返しをしていたのに、騙される覚悟をもって観てしまったがために拍子抜けのところがありました。
「カメラを止めるな」のようにそこまで宣伝しなくても観れる作品ではあると思うのですが、豪華俳優陣を考えると仕方ないのかもしれないですね。
アクションが無い中でも疾走感をもたせたBGM

本作品はアクションやら何もないが事件やら速水の突拍子も無い企画が映画の緩急をつくっている。
それをさりげなく後押ししたのがインストロメンタル・バンドLITEでした。
シリアスな場面からどんでん返しのところ、無音になるところ含めてよいBGMだったと思わされました。
どこかの場面だけセリフが聴きづらい場面があったので、音を小さくしたほうがいいところがありましたね。
これは編集側でしょうか。
音楽自体はすごくよかったです。

彼らは2006年にUK・アイルランドツアーを皮切りに世界でツアーを成功させた先駆者的なバンドじゃよ。
大泉洋ははまり役
大泉洋をモデルに書いたと知らずに映画を観ましたが、なるほどと納得せざるを得ない。
大泉洋の自然体のキャラがありつつ、裏の顔もしっかり表現できる演技力。
人たらしでありつつ、企画をやり遂げる巻き込み力ももっている。
大泉洋ありきでつくられた作品でした。

個人的には松岡茉優が好きなので演技含めてずっと眼福でした。

予告のみんな騙されるってのはどうなのか。
いろんな人の感想にも書かれていたがやはり思いました。
予告が盛りすぎていてラストが拍子抜けするという。
「騙し」に重きを置いていたがそこまでのものをラストに感じなかった。
しっかり伏線していたのでその通りだなと。騙されたという感覚は少なかったです。
映画を宣伝する上では仕方ないのかもしれませんが、やはり微妙です。
あの予告さえなければ「騙される」と身構えることなく視聴できたと思います。
また、せっかくの騙し絵というタイトルを作品内で回収しなかったのも残念です。
原作では騙し絵についての言及がされていて、速水そのものを表現している(表面では情熱・人たらし、裏面では冷徹・利益主義)という伏線回収があります。
それを映画でもしなかったのがなんとももったいないなと。
単純にもっと大泉洋とか、出版業界にメスを入れた宣伝でもよかったんじゃないかと思ってしまった。

まずは観てもらうことが肝心だからの。過大表現になってしまうんじゃろな。
最後に

予告さえ抜けばほんとに楽しく観れる作品でした。
出版業界の現状を知る機会にもなりましたし、同じ出版社においても著者の引き抜きや駆け引きがあるとは思わなかったので新しい世界を知ることができました。
個人的には本棚がすくなくなり電子書籍に移行しているのですが、本屋は必要派です。
電子書籍だと偶然の出会いが少なく、サイトなどの人工知能?によって似たような作品をおすすめされて読んでいきます。
ですが本屋であれば、歩き回っていろんな作品に出合えますし、思いもよらないところで人生の一冊にあったりします。
なかなか本屋に行けていないところでしたが、本作品を観て小説でも読もうかとおもわされました。
では最後に本ブログ恒例の五七五まとめをしたいと思います。
予告さえ
騙してくるのか
そうくるか
予告への皮肉もこめて書いてみました。
本記事を最後までお読みいただきありがとうございました。
他のまとめ五七五は以下にまとめていますよ。
記事:これまでのまとめ五七五
ではでは。
原作のリンクをはっておきます。